「ほら〜ハルがちゃんと食わねーから体力は戻らねーし、便も出ねーし」
俺はオムツを開けて、ハルの下腹部を押し、腹の状態を触診する。
「たいして腸にないと思うが、残ってるのが中で腐っても困るしな・・ちょっと浣腸してみるか」
目を開けたまま、ぼーっと天井を見つめるハルを見る。
「浣腸なんかしたら、またひきつけ起こすかな〜温めて様子みるか・・なぁハル、風呂にするか」
「あき・・」
「はいはい」
俺は風呂の準備をすることにした。
「こうやって、マッサージして腸を動かすんだ」
背中を俺に預け、気持ち良さそうに息をつくハルに話しかける。
「何回見ても綺麗なもんだな〜」
浮かび上がった刺青に、俺は見るたびに感心する。
「この刺青って、ハルが自分の意思で入れたのか?それともアキに言われて入れたのか?」
「あき・・・」
「アキに関係してるのは確かだろうけど・・アキの為か・・アキに無理やりか・・」
「あき・・・」
「ハルはアキが好きだったのか?・・って過去形じなく今も好きなのかな」
「あき・・・」
「アキに会いたいか?アキに会えばハルは自分の中から出てくるか?」
「あき・・・」
「わかったから。ほら、泣くな」
ただひたすらに涙を流すハルの頬にキスしてなだめる。
「携帯にかけても出ないと思ったら、また風呂に入ってたのか」
その声に顔を上げると、入り口にアクトーレスが立っていた。
「何か分かったのか?」
「あぁ、報告するから、とりあず風呂から出ろ」
風呂から上がり、ハルを寝かせると、俺たちはベットから少し離れたソファーに腰掛け小声で話した。
「おそらく、ハルが言う『アキ』は、その章夫って奴で間違いないだろう。2人は高校の時の同級生だった。在学中も卒業後も、時に接触してた訳じゃないみたいだったが、3年ほど前に章夫の組の奴が怪我で入院した病院にハルが居て再会となったらしい」
「それで付き合い始めたと?」
「いやそれが、こないだも話した通り、2人が繋がってたと知ってる人間はほとんど居ないんだ」
「じゃなんで、ハルが言う『アキ』が、そのアキオで間違いないって言い切れるんだよ」
「その章夫って奴の敵対してる組が、ヴィラにハルを捕獲させたんだ」
「はぁ?なんじゃそりゃ」
「ハルは章夫の弱みだったって事だろ。2人は必死で関係を隠してたみたいだが、敵に知られちまったんだろうな」
「それでアキオへの嫌がらせにハルの拉致か」
「おそらく・・嫌がらせか、復讐か、脅しか知らないけどそういう意味だろ」
「で、アキオは?」
「ハルが居なくなって、血眼になって探したみたいだ。敵対する組が絡んでるとわかって、あっという間に壊滅させちまったらしい」
「ありゃりゃ。敵にしちゃ、ハルを隠したのは誤算だった訳だ。それで?」
「そろそろヴィラの存在まで突き止めてるんじゃないか?」
「ここに辿り着くのは、時間の問題ってか」
「たぶんな」
「ハルの白馬の王子様、参上ってとこか」
「それでいいのか?」
「いいも悪いも、それでハルが出て来るかもしれない」
「でもハルはパテルの犬だ」
「そこは王子様が、ハルの為になんとか頑張るんでしょーよ。なんてったって組を1つ壊滅させたぐらいだから」
俺はベッドに近づき、ハルの髪を撫でる。
「良かったなハル。もうすぐアキが迎えに来るぞ」
「おい、エンリケ!」
「あき・・・」
ハルが『アキ』の言葉に反応する。
「そうだ。ハルの大好きなアキだ」
アクトーレスの報告から3日ほど過ぎたが、ハルは相変わらず意識の中から出てこない。
「ハル〜♪飯だぞ〜今日はちょっと味付け・・・!」
部屋に入ると、ハルが苦しそうにハァハァと大きな息をしていた。
「どうしたハル?・・・熱か」
近づいて頬に触れると、燃えるように熱かった。
俺はコールを押し、抗生剤入りの点滴を持ってくるよう伝える。
「くそ〜。だからちゃんと食えって言ってるのに・・」
体力が落ち、免疫力が低下しているハルは、朝から点滴で薬を入れているがなかなか解熱しなかった。
「あんまり高い熱が続くのはマズイな・・」
俺は熱い息を繰り返すハルを見つめ、ため息をつく。
「仕方がない。解熱剤の座薬を使うか」
昼に追加で処方された座薬を冷蔵庫から出す。
「いいかハル。これは熱を下げる為の薬だ。調教用の物じゃない。わかるな?」
ハルの耳元で説明する。
「今からオムツを開けてケツから入れるが、パニックを起こすなよ。熱を下げて元気にならないと、アキが来てくれても会えないからな」
「あ・・き・・」
ハルが熱に潤んだ瞳を開けた。
「そうだ。アキが来てくれるまでに元気になるんだ。お前が病気じゃアキが悲しむ」
声をかけてベッドに上がると、ハルの体を向かい合わせにして俺の足に座らせた。
「ハル・・熱を下げる為の薬だ。わかるな」
俺の肩に頭を乗せているハルの耳元で、もう一度説明する。
「ケツに入れるが、小さいから痛くない。すぐ終わるから、しっかり気を持て。飛ぶなよ。大きく息く吐いて・・そういい子だ。すぐ済む」
ゆっくり尻の方へ手を下げ、反応を確かめながら声をかける。
「薬を入れるからな・・」
「んっ!・・・あき!」
「大丈夫だ。ハル終わった。もう入った。もう終わりだ」
挿入に一瞬ビクンっと体を跳ね上げたハルをしっかり抱きとめ終わったから大丈夫だと繰り返す。
「偉かったな。これで熱も下がる。いい子だハル・・」
座薬が出てこないように、しばらく入り口を押さえていたが、ハルは逃げずに俺に体を預けたままだった。
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